
終業式が近づくと、学校が休みになることに少しホッとする一方で、別の不安が出てくることがあります。
夏休みに入ったら、昼まで寝ていてもよいのかな。
一日中ゲームをしていても、今は何も言わない方がよいのかな。
学校から出された宿題は、どこまでやらせればよいのかな。
勉強の遅れを取り戻すなら、夏休みを無駄にしない方がよいのではないか。
子どもは学校が休みになることで、少し穏やかに見える。
けれど、親の頭の中では、
「このままで大丈夫なのかな」
という考えが止まりません。
学校が休みになっても、親の不安まで夏休みになるわけではありません。
ただ、夏休み前半から、生活リズム、ゲーム、宿題、勉強、2学期の登校をすべて整えようとする必要はありません。
まず確認したいのは、今のお子さんがどのくらい疲れていて、何には触れられ、何にはまだ触れにくいのかです。
この記事は、不登校の中学生の夏休みを「前半・中盤・後半」に分けて考えるシリーズの前編です。
夏休み直前から最初の1〜2週間に、親が何を見て、何を学校へ確認しておけばよいのかを整理します。
- 夏休み前半に優先したいこと
- ゲームはできるのに勉強できない理由
- 宿題を始める前に確認したいこと
- 夏休み前に学校へ聞いておきたいこと
まず今日やることは、この3つだけです

この記事を、最初から最後まですべて読んでから動こうとしなくても大丈夫です。
まずは、今日できそうなことを一つだけ選んでみてください。
今日できることは、次の3つです。
1.食事・睡眠・体調を確認する
宿題や勉強のことを考える前に、まずは食事や水分が取れているか、きちんと眠れているか、身体の不調が続いていないかを見てみましょう。
2.宿題は、先に親だけで確認する
宿題を子どもの前にすべて並べるのではなく、まずは親が量や範囲、提出期限を確認しておきます。
3.学校に確認したいことをメモする
宿題の提出方法や評価の扱い、夏休み中の連絡先など、分からないことを書き出しておきましょう。
この3つを、一日ですべて終わらせる必要はありません。
今日は食事や睡眠の様子を見る。
明日は宿題を確認する。
そのくらいのペースで大丈夫です。
一つできれば、それで十分です。
夏休み前半は、子どもの現在地を見る期間
夏休みに入ると、親は「せっかく学校が休みなのだから、この機会に何かを変えたい」と考えやすくなります。
生活リズムを整えたい。
宿題を少しでも進めたい。
勉強の遅れを取り戻したい。
どれも、親として自然な気持ちです。
ただ、夏休みの初日から細かく予定を立て、生活や勉強を一度に整えようとすると、学校が休みになっても、子どもの緊張が抜けないことがあります。
夏休みの前半は、何かをすぐに変えようとするよりも、学校という負担が一時的になくなったあと、子どもの様子がどう変わるかを見る期間と考えてみましょう。
たとえば、次のような変化が見られるかもしれません。
- 表情が少しやわらいだ。
- 食事の量が増えた。
- 家族との会話が戻ってきた。
- 昼まで眠る日が増えた。
- ゲームをする時間が長くなった。
- 宿題を見ると、自分の部屋へ戻った。
- 学校の話をしていなくても、どこか落ち着かない。
学校が休みになり、元気そうに見えたとしても、不登校の背景にあるつらさや不安がなくなったとは限りません。
反対に、眠る時間が増えたからといって、夏休みを無駄にしているわけでもありません。
張りつめていた心や身体を休ませるために、今は睡眠が必要になっていることもあります。
今の状態は、次の3つに分けて見てみましょう。
| 確認すること | 見るポイント | 親ができること |
|---|---|---|
| 安全 | 食事・水分・睡眠・身体症状 | 必要に応じて相談する |
| 余力 | 好きなこと・会話・外出・身支度 | できることを急に増やさない |
| 気がかり | 宿題・勉強・2学期・高校受験 | 不安の中身を分ける |
食事や入浴も難しいときは、安全を優先する
次のような状態が見られる場合は、宿題や生活リズムを整えることよりも、まず体調と安全を確認します。
- 食事や水分をほとんど取れていない
- 強い不眠や過眠が続いている
- 入浴や着替えが長いあいだできていない
- これまで好きだったことにも関心を示さない
- 強い頭痛、腹痛、めまいなどが続いている
- 「消えたい」「死にたい」と話している
- 自傷行為が見られる
このような状態を、単なる生活の乱れとして片づけないことが大切です。
家庭だけで判断することが難しい場合は、小児科などの医療機関、自治体の相談窓口、学校の養護教諭、スクールカウンセラーなどに相談してください。
差し迫った危険がある場合は、ためらわずに119番や110番を利用してください。
好きなことができても、勉強できるとは限らない

子どもがゲームをしながら笑っている姿を見ると、
「これだけ元気なら、少しは勉強できるのではないか」
と思うことがあります。
学校の話をすると黙り込むのに、友達とはオンラインで楽しそうに話している。
朝は起きられないのに、夜になると元気になる。
そんな様子を見て、
「本当に具合が悪いのだろうか」
と感じる瞬間があっても、不思議ではありません。
ただ、好きなことを楽しめることと、学校や勉強に向き合えることは別です。
ゲームや動画は、自分で選び、自分のペースで進められます。つらくなれば、途中でやめることもできます。
一方で、勉強は次のようなことを一度に思い出すきっかけになる場合があります。
-
分からない自分
-
学校へ行けていない自分
-
授業から遅れている現実
-
成績や内申点
-
高校受験への不安
そのため、ゲームができるからといって、勉強に向かうための余力まで残っているとは限りません。
ただし、遊んだ時間の長さだけを見るのではなく、食事や睡眠、課金の状況、オンライン上の安全、家族の生活への影響については確認しておきます。
ゲームや昼夜逆転について、どのように声をかければよいかは、中編で詳しく整理します。
宿題や2学期を気にしているときは、不安を分ける
子どもから、
「宿題をどうしよう」
「勉強が分からない」
「2学期からは行こうかな」
「高校には行きたい」
といった言葉が出ることがあります。
そのときは、すぐに教材を買ったり、登校の約束をしたりするのではなく、子どもが何を心配しているのかを分けて考えます。
たとえば、
-
宿題を提出できないことが不安なのか
-
授業についていけないことが不安なのか
-
内申点が気になっているのか
-
高校へ進学できないと思っているのか
-
教室へ戻ることが怖いのか
「勉強が心配」という一言の中にも、いくつもの不安が含まれていることがあります。
子どもが話してくれたときは、
「一番気になっているのは、宿題かな。それとも2学期のことかな」
と、答えやすい形で聞いてみます。
うまく答えられなくても構いません。
答えを急がせず、何に困っているのかを一緒に分けていくことが、最初の一歩です。
夏休みの宿題は、親が先に中身を確認する

学校から夏休みの宿題を受け取ると、親はどうしても量や提出期限が気になります。
ただ、不登校の子どもにとって、宿題は単なる学習課題ではないことがあります。
宿題を開くことで、
- 受けていない授業を思い出す
- 分からない問題の多さに気づく
- 2学期が近づいていると感じる
- 学校へ行けていない自分を責める
といった反応が出ることもあります。
そのため、夏休みの初日にすべての宿題を机に並べ、すぐに計画を立てる必要はありません。
まずは親だけで内容や量、提出期限を確認します。
そのうえで、提出方法や取り組む範囲など、分からないことがあれば学校へ確認しておきましょう。
| 親が先に見ること | 分からなければ学校へ聞くこと |
|---|---|
| 宿題の教科と量 | すべて提出する必要があるか |
| 授業を受けていない範囲 | 別の課題へ変更できるか |
| 自力で取り組めそうな課題 | できる部分だけ提出できるか |
| 提出期限 | 延長できるか |
| 提出方法 | 親が提出してもよいか |
| 評価との関係 | どの評価材料になるか |
宿題は、「全部終わらせる」か「何もしない」かの二択ではありません。
できる教科やページだけ取り組む、得意な課題を一つ選ぶ、提出期限を相談するといった方法が取れる場合もあります。
宿題や提出物が通知表へどう影響するのか気になる場合は、不登校の内申点はどうなる?中学生の高校受験で親が確認したいことで、評価材料と学校への質問を詳しく整理しています。
宿題と学び直しは目的が違う
親から見ると、夏休みの宿題も、勉強の遅れを取り戻すことも、同じ「勉強」に見えるかもしれません。
ただし、それぞれの目的は異なります。
| 学習の種類 | 主な目的 |
|---|---|
| 夏休みの宿題 | 学校への提出や評価 |
| 学び直し | 分からなくなった地点まで戻る |
| 受験勉強 | 志望校の入試に備える |
宿題を終わらせても、学習の抜けがすべて埋まるとは限りません。
反対に、小学校の算数や中学1年生の英語まで戻って学び直したとしても、それが学校の宿題を提出したことにはならない場合があります。
本人が「勉強をやり直したい」と話しているなら、必ずしも今の学年の教材から始める必要はありません。
最初の目標は、学校の進度に追いつくことではなく、どこまで理解できていて、どこから難しくなっているのかを知ることです。
夏休み中にすべてを取り戻せなくても、始める位置が分かれば、次に選ぶ教材や支援の方法が見えやすくなります。
学校が休みに入る前に、連絡方法を確認しておく
夏休みに入ると、担任と連絡を取りにくくなる場合があります。
終業式前後に、次の3点を確認しておくと安心です。
- 夏休み中に相談できる日や連絡先
- 担任が不在の場合の相談相手
- 始業式に行けない場合の連絡方法
2学期から通常登校できるかどうかを、今すぐ決める必要はありません。
ただ、行けない場合に誰へ連絡すればよいかを知っておけば、夏休み後半の不安を一つ減らせます。
別室登校、短時間登校、定期テストの受け方などは、夏休み後半に学校と相談しても構いません。
欠席日数や遅刻・早退が高校受験へどう影響するのか気になる場合は、不登校の出席日数は高校受験に影響する?で、学校へ確認したい内容を整理しています。
高校受験全体について不安が広がっている場合は、中学生の不登校でも高校受験はできる?から読むと、内申、出席日数、勉強、進路を順番に整理できます。
生活リズムは、一つの困りごとから考える

学校へ通っている子どもの夏休みを見ると、
朝早く起きる。
午前中に宿題をする。
夜は早く寝る。
といった生活が、理想的に見えるかもしれません。
ただ、起床、食事、外出、勉強、入浴、就寝を一度に変えようとすると、親にとっても子どもにとっても、大きな負担になります。
まずは、家庭で今いちばん困っていることを一つ選びます。
たとえば、
-
食事や水分を取る
-
夜中は家族が眠れる音量にする
-
一日に一度は家族と顔を合わせる
-
起きたらカーテンを開ける
といったことです。
夜中の音がいちばん困っているのであれば、ゲームの総時間ではなく、まずは音量について話します。
食事を取らないことが心配なのであれば、起床時刻を直すことよりも、食べやすいものを用意することから始めます。
生活全体を一度に直そうとせず、今困っていることを一つだけ扱う。
それだけでも、家庭の負担が軽くなることがあります。
決めたことが続かなかったときも、本人を責める必要はありません。
その方法が、今の子どもの状態に合っていたかどうかを見直してみましょう。
共働きで留守番をさせる場合は、安全を確認する
中学生だから一人で留守番できるとも、不登校だから一人にしてはいけないとも、一律には言えません。
留守番をさせる場合は、その子が今、一人で安全に過ごせる状態かどうかを確認します。
たとえば、次のような点です。
- 食事や水分を自分で取れるか
- 体調が悪くなったときに連絡できるか
- エアコンを自分で使えるか
- 火や調理器具を安全に扱えるか
- 一人で過ごすことに、安全面での心配がないか
- 緊急時に頼れる大人がいるか
仕事中の連絡については、昼にスタンプを一つ送るなど、親子どちらにとっても負担になりにくい方法を決めておきます。
毎日、手作りの昼食を用意できなくても構いません。
大切なのは、理想的な食事を作ることではなく、食べ物と水分を取れる状態を整えておくことです。
不登校の中学生の夏休み前半によくある質問
休息が必要な状態なら、予定を増やさなくても構いません。
ただし、食事・睡眠・体調は確認し、親は宿題や学校への連絡方法を整理しておきましょう。
ゲームと宿題では、感じる負担が異なります。
ゲームができても、学校や勉強に触れられる状態とは限りません。
学校や教科によって扱いが異なります。
難しい場合は、できる範囲の提出、期限の延長、別課題への変更を学校へ相談します。
終業式前後に、宿題の扱いと夏休み中の連絡先を確認しておくと安心です。
急ぎでなければ、質問をメモしてからまとめて相談しても構いません。
まとめ|夏休み前半は、現在地を確認する
夏休み前半に確認しておきたいのは、次の3つです。
- 食事・睡眠・体調に心配がないか
- 宿題の量や提出方法はどうなっているか
- 学校に何を確認しておきたいか
目立った変化がなくても、それだけで失敗ではありません。
今すぐすべてを決める必要はありません。
分からないことを一つ確認しておく。
今の子どもの様子を一つ知っておく。
それが、夏休み前半に親ができる準備です。
次の記事では、夏休み中盤の悩みを整理します
夏休みが始まってしばらくすると、
昼まで寝ている。
一日中ゲームをしている。
宿題に触れていない。
勉強が進んでいない。
といったことが、前半よりも気になり始めます。
すると、
「そろそろ何か言った方がよいのではないか」
「このまま何もしなくて大丈夫なのだろうか」
と、親の焦りも強くなっていきます。
次の中編では、以下の内容を整理します。
不登校の中学生の夏休み中盤|ゲーム・昼夜逆転・勉強を親はどう考える?
- ゲームを取り上げる前に確認したいこと
- 昼夜逆転を、朝起こすだけで直そうとしない理由
- 「そろそろ勉強したら?」と言う前に考えたいこと
- 親の焦りが強くなったときの整理方法
夏休みの中盤は、子どもだけでなく、親の不安も大きくなりやすい時期です。
次の記事では、何を伝え、何についてはもう少し待つのかを、具体的に整理していきます。
参考文献
- 不登校児童生徒への支援の在り方について(文部科学省)
- 不登校児童生徒の出席扱い・成績評価について(文部科学省)
- 自傷行為や死にたい気持ちに気づいたら(厚生労働省)
- 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)






