息子にドリルを投げつけて壁に穴が…。中2の秋、焦り狂った私の大失敗と後悔

今日も一日、誰にも弱音を吐けずに、ひとり息を潜めるように過ごしていたお母さんへ。

朝、泥のように眠り続ける息子の背中。 不機嫌そうに仕事へ向かう夫の足音。 「いつまで休ませる気だ」という無言の圧力に、息が詰まるような毎日を送っていませんか。

今からお話しするのは、私が長男に対して犯した、一番醜くて、今でも激しく後悔している失敗の記憶です。

登場人物

  • 母・・・まどか
  • 長男・・・将太(仮)

中2の秋、長男の翔太が完全に部屋から出てこなくなりました。

昼夜逆転し、ツンとした汗の匂いと淀んだ空気がこもった部屋。 そこから1日15時間、暗闇の中で響き続けるのは、ゲームのコントローラーのカチャカチャという乾いた音だけでした。

私が何より辛かったのは、育児をすべて私に丸投げしてきた夫との、絶望的な温度差でした。

「お前の育て方が甘いからこうなるんだ。ゲーム機を取り上げろ」

週末のたびに正論を振りかざして私を責め立てる夫は、月曜の朝になればパリッとしたスーツを着て、足早に玄関を出ていきます。 学校や世間の目という泥沼に私一人を置き去りにして、自分だけが安全な「普通の世界」へ逃げていくような気がしてなりませんでした。

理詰めで解決しようとする夫の目には、すり減ってボロボロになった息子の心など、最初から映っていなかったのです。

家の中だけでなく、一歩外に出ても、そこは私にとって針のむしろでした。

夕方のスーパー。特売品の野菜を選んでいるとき、同じクラスのお母さんたちの姿が見えると、私は反射的に陳列棚の陰に隠れました。 気づかれないよう、じっと息を殺す惨めさ。

「あの子、また今日も休んでたよね」 「お母さん、何してるんだろうね」

遠くで楽しそうな笑い声が聞こえるたび、絶対に私の噂話をしているはずだという被害妄想が膨らみ、冷や汗でシャツが張り付くのを感じました。

家では夫に責められ、外では同級生の親から逃げ回る日々。

「私一人でなんとかして、夫にも世間にも、ちゃんとした母親だと証明しなきゃ」

誰にも分かってもらえない孤独と重圧が、私の胸を激しく締め付け、呼吸をどんどん浅くしていきました。

逃げ場を失った私は毎晩、過呼吸のような息苦しさを抱えながらスマホで検索を繰り返していました。

深夜2時、すがるような思いで見つけた不登校支援のサイト。 そこに書かれていたのは、私をさらに追い詰める冷たい言葉でした。

「親が毅然とした態度を見せなければ、子どもは逃げ続けます」 「最低限の学習習慣だけは、親の責任で継続させてください」

夫の言葉と重なるその強いメッセージに、完全に自信を失っていた私は打ちのめされました。

「そっか、やっぱり私が甘いんだ。私が親として、無理にでも勉強させなきゃいけないんだ」

ネット越しの正論に追い詰められた私は、最悪の行動に出ます。

焦りに背中を押された私は、本屋で薄い英語のドリルを買い、息子の部屋のドアを開けました。 いつものように、画面に向かって無言でゲームをしている背中。

「ゲームの合間でいいから、1ページだけでもやって」

声をかけても、一切無視する息子。 その態度を見た瞬間、私の中で張り詰めていた糸がプツンと切れました。

心臓がバクバクと嫌な音を立て、視界がぐにゃりと歪んだのを覚えています。 気がついた時には、買ったばかりのドリルを、息子の背中に向かって思い切り投げつけていました。

バサッ。

鈍い音の後、息子はゆっくりと振り返り、私に向けて、血の気が引くような「軽蔑の目」を向けました。 そして無言のまま立ち上がり、すれ違いざまに、思い切り壁を殴りつけたのです。

ドスッ!という、重い音。

壁にはぽっかりと、大人の拳ほどの黒い穴が空いていました。

壁のクロスは破れ、パラパラと石膏ボードの白い粉が床に落ちていきました。

息子はそのまま布団に潜り込み、それから数日間、二度と顔を出しませんでした。 私は床に落ちた、表紙の折れ曲がったドリルを見つめたまま、へなへなと座り込み、ただ震えていました。

学校という外の世界で傷つき、限界を迎えて逃げ込んできた家。 そこは、息子にとって世界でただ一つの「安全地帯」だったはずです。

それなのに、夫への意地とネットの正論を鵜呑みにし、親の私がその場所を完全に壊してしまった。

「私は、取り返しのつかないことをした」

自分の愚かさと絶望感で、息をするのすら苦しかった真っ暗闇の夜を、今でもはっきりと覚えています。

今、これを読んでくださっているあなたも、夫と意見が合わず、一人で抱え込んでいるかもしれません。

スーパーで知っている顔を見るたびに隠れ、焦りから子どもに感情をぶつけてしまい、「私は最低の母親だ」と声を殺して泣いている夜があるかもしれません。

でも、どうかご自身を責めないでください。

あなたがパニックになって間違えてしまうのは、決して愛情がないからではありません。 誰にも助けてもらえず、たった一人で「子どもの未来」という重すぎる荷物を背負い込んで、必死に戦っているからです。

あの壁の穴は、今も我が家のリビングに残っています。

だからこそ、あなたには、あの時の私と同じような真っ暗闇の中で、一人で自分を責め続けるような思いをしてほしくないのです。

今日はもう、ネットで検索する手を止めて、どうか目を閉じてください。

「今日も一日、私たち親子はなんとか生き延びた」

それだけで十分です。本当に、毎日よくやっています。 どうか今夜は、ご自身の心を少しでも休めてあげてくださいね。